頻繁に頭痛がある人の多くは、先週がどれくらいつらかったかを大まかには話せます。でも、先月の頭痛の日数や、それぞれの日に何を飲んだか、前の晩にたいてい何があったかを答えられる人はごくわずかです。記憶は記録係としては頼りにならず、痛みがあるときはなおさらです。頭痛ダイアリーがあれば、それを解決できます。ぼんやりとしたつらい日々の連続が、自分と医師が実際に読み取れる情報に変わります。
このガイドでは、何を記録するか、忙しいときにも習慣を続けるにはどうするか、数週間分の記録を実際に行動できる判断に変えるにはどうするかを紹介します。
頭痛ダイアリーが役立つ理由
頭痛に、はっきりした原因が1つだけあることはまれです。睡眠不足、昼食抜き、ストレスの多い締め切り、天気の変化など、いくつもの要因が同じ日に重なったときに起こりやすくなります。痛みには気づいても、その下地は前日や前々日から静かに積み重なっています。記録がなければ推測するしかなく、推測はたいてい直前に起きたことに引きずられます。
ダイアリーは3つの点で役立ちます。頭痛が実際にどれくらいの頻度で起きているかがわかります。これは思っているより多いことも少ないこともあります。最もつらい日の前に起きやすい状況が見えてきます。そして、医師が診断や治療方針を決めるのに必要な情報を渡せます。英国の慈善団体The Migraine Trustも、まさにこうした理由からダイアリーを勧めています。医師の診断に役立ち、誘因や前ぶれに気づけるようになり、治療が効いているかどうかがわかる、というものです。1
毎日記録すること
最も役立つダイアリーは、2か月後もまだ続けているダイアリーです。つまり、ときどきすべてを記録するよりも、少ない項目を毎日欠かさず記録することが大切です。まずは次の項目から始めましょう。
- 頭痛があったか、なかったか。 頭痛のない日も記録しましょう。パターンを見えるようにするための比較対象になります。
- 始まった時刻と続いた時間。
- 強さ:0〜10の段階、または単に軽度・中等度・重度で。
- その他の症状:吐き気、光や音に敏感になる、前兆など。
- 薬:何を、いつ飲んだか、効いたかどうか。
- 睡眠:だいたい何時に寝て、何時に起きたか。
頭痛があった日は、始まる前の数時間について短いメモを加えましょう。食事、カフェイン、画面を見ていた時間、ストレス、アルコール、いつもと違うことなどです。発作の前の6〜8時間に、最も多くの手がかりがあることがよくあります。月経がある人は、周期のどのあたりかも記録しましょう。ホルモンの変化は片頭痛によく見られるパターンです。
始めるにはこれで十分です。細かい項目はあとからいつでも追加できますが、初日から長いリストを作るのは、10日目でやめてしまういちばんの近道です。
習慣を続けるコツ
細かさよりも、続けることのほうがはるかに大切です。記録が抜けるとパターンが当てにならなくなるので、週1回の完璧な記録より、毎日2行の記録のほうが勝ります。次のことが役立ちます。
毎日同じ時間に記録しましょう。 夜の歯みがきなど、すでにある習慣に結びつけます。夜に短く記録すれば、記憶が新しいうちに1日全体を残せます。
頭痛のない日はすばやく済ませましょう。 何もなかった日の記録は10秒で終わるようにします。長いメモは、頭痛があった日やいつもと違う感じがした日にとっておきましょう。
できれば発作中に書き留めましょう。 始まった時刻と強さは、痛みが消えると忘れがちです。その場で短くメモするだけで十分で、残りはあとから書き足せます。
一度にすべてを変えないようにしましょう。 最初の週に睡眠もカフェインも画面時間も見直したくなりますが、ぐっとこらえましょう。最初の1〜2週間は生活をそのままにして、比較のための正直な基準をつくります。
紙とスマートフォンのどちらを使うかは、自分が実際に続けられるほうで決めましょう。両者の比較は紙のダイアリーかアプリかで紹介しています。どちらを選んでも、形式より毎日の習慣のほうが重要です。
最初の2週間
最初の14日間は基準づくりの期間と考えましょう。正直に記録し、できるだけ何も変えないようにします。最後に、頭痛があった日数、そのうち中等度または重度だった日数、鎮痛薬を飲んだ日数の3つを数えます。
この3つの数字が出発点です。そのあとに試す変化はすべて、この数字と比べられます。基準がなければ、新しい習慣が効いたのか、たまたま穏やかな週だったのかを見分けるのはとても難しくなります。
思い込みにだまされずにパターンを読むには
数週間たつと、いろいろなことに気づき始めます。本当のものもあれば、偶然のものもあります。次のルールを守ると、正しく判断できます。
1回の出来事ではなく、繰り返しを探しましょう。 赤ワインのあとに1回頭痛があっただけでは、ほとんど何もわかりません。睡眠が6時間未満だった5日のうち4日に頭痛があったなら、注目する価値があります。
頭痛のない日も確認しましょう。 頭痛のない日にもよく眠れなかった日がたくさんあるなら、睡眠不足は主な要因ではないかもしれません。パターンに意味があるのは、両方を比べたときだけです。
組み合わせを想定しましょう。 つらい日は1つの要因ではなく、2つか3つの要因が重なって起こると気づく人が多いです。睡眠不足だけなら平気でも、睡眠不足に食事抜きと長時間の画面作業が重なると頭痛が出る、ということがあります。本当の誘因と偶然を見分ける方法は、頭痛の誘因のガイドで詳しく説明しています。
一度に変えるのは1つだけにしましょう。 就寝時刻をそろえるなど、何かを試すときは、2〜3週間ほかのことをできるだけ一定に保ちます。3つを同時に変えて頭痛が良くなっても、どれが効いたのかわかりません。
注目する価値がある分野としては、睡眠と頭痛、食事を抜くこと、ストレスによる頭痛、カフェイン、画面による頭痛、天気による頭痛、そして香水による頭痛のような強いにおいがあります。週末の頭痛、仕事中の頭痛、旅行中の頭痛のように、カレンダーに沿って現れるパターンもあります。起きたときにすでに頭痛があることが多いなら、朝の頭痛のガイドで夜間の原因を解説しています。
薬は丁寧に記録しましょう
薬は記録すべき最も重要な項目の1つですが、最も忘れられやすい項目の1つでもあります。市販の鎮痛薬も含めてすべての服用と、それぞれがどれくらい効いたかを記録しましょう。暗い部屋で休む、多くの人が冷凍庫に常備している頭痛キャップを使うなど、薬以外で試したことも書いておくと、本当に役立つものが見えてきます。
これが大切な理由は2つあります。どの治療が効いているかを医師に示せます。そして、ほかの方法では気づきにくいパターンが見えることがあります。鎮痛薬を頻繁に飲みすぎると、それ自体が頭痛を増やすことがあるのです。医師はこれを薬物乱用頭痛と呼びます。国際頭痛分類(ICHD-3)では、パラセタモール(アセトアミノフェン)などの単純な鎮痛薬なら月15日以上、トリプタン、オピオイド、複合鎮痛薬なら月10日以上の定期的な使用が3か月を超えて続くことが基準とされています。3 ダイアリーがあれば、その基準に近づいているかどうかが簡単にわかります。近づいている場合は、自分で何かを変える前に医師に相談してください。
10分でできる週1回の振り返り
週に1回、直近7日間を振り返り、次の4つの質問に答えましょう。
- 頭痛があったのは何日で、どれくらいの強さだったか?
- 薬を飲んだのは何日か?
- 最もつらかった日に共通していたことは何か?
- 来週試すこと、または続けることを1つ挙げるなら何か?
最後の質問の答えは書き留めておきましょう。良い心がけを長々と並べるより、「平日は13時までに昼食をとる」のような小さく具体的な行動を1つ決めるほうがずっと役立ちます。月に1回は、合計を基準と比べて大きな傾向を確認しましょう。
ダイアリーを医師との相談に活かす
ダイアリーが最も役立つのは、医師や頭痛専門医の手に渡ったときです。受診前には、何ページものメモをそのまま渡すのではなく、短い要約を用意しましょう。1か月あたりの頭痛の日数、そのうち重度だった日数、薬をどれくらいの頻度で使い何が効いたか、気づいたパターン2〜3個です。詳しく見たいと言われたときのために、ダイアリー全体も持っていきましょう。
こうすると、「頭痛がよくあるんです」という漠然とした会話が具体的な話になり、医師が診断や治療を見直すべきかを判断しやすくなります。
パターンを待ってはいけないとき
ダイアリーは、繰り返す頭痛を理解するためのものです。受診を遅らせる理由にはなりません。突然始まる非常に激しい頭痛、頭のけがのあとに起きた頭痛、または脱力やしびれ、話しにくさ、錯乱、けいれん発作、視力の喪失、首のこわばりや発疹を伴う高熱がある頭痛の場合は、すぐに医療機関を受診してください。2 頭痛の性質が変わった、だんだん悪化している、50歳を過ぎてから始まった、という場合は早めに医師に相談してください。こうした危険なサインについては、頭痛が始まったときにすることのガイドで詳しく説明しています。
はじめてみましょう
始めるのに完璧なしくみは必要ありません。頭痛があってもなくても今日から記録し、結論を出す前に2週間続けてみましょう。スマートフォンを使いたい場合は、Headache & Migraine Diaryで頭痛の強さ、誘因、薬を数秒で記録でき、頭痛のあった日がカレンダーに表示されるのでパターンを見つけやすくなります。ノートでもかまいません。大切なのは続けることです。

